コロナ禍となって1年が過ぎ、病院での診療・看護のさまざまな場面で“新たな療養様式”“ケア様式”へと変わってきました。マスク常時着用の感染対策の中、病棟看護師のアイデアから始まった“新たなコミュニケーション様式”についてご紹介したいと思います。
当院ではコロナ禍になる以前、認知症高齢者とのコミュニケーションの場面は「マスクを外して笑顔で会話をする」という工夫をしていました。認知症高齢者が入院すると状況を理解してもらうため、看護師は多くのことを患者さんに説明します。入院による環境の変化や繰り返される説明により、認知症高齢者の“不安”は徐々に強くなっていきます。そのような患者さんたちの不安を少しでも和らげ安心してもらうため、「マスクを外して笑顔で会話」を推奨してきました。しかし、このコロナ禍でマスクを外して、会話をする機会がなくなってしまいました。そのため、少しでも私たちの“思いやりの心”を届けたいと考え名札につけるパネルを作成しました。
笑顔いっぱいの顔写真入りのパネルを作成して名札につけ、パネルを見せながら自己紹介していきます。多くの認知症高齢者はそのパネルに興味をもち、手に取って眺める行動をとります。パネルに興味を持っている間「〇〇といいます。よろしくお願いします」と何回か伝え、パネルに興味を示さなくなった後からバイタルサインなどのケアを行っていきます。パネルを用いて注意向けることで、より言語的なメッセージが伝わりやすくなると考えております。そして、看護師の存在を認識できるため、認知症高齢者の安心にも繋がります。現在は、ひとつの病棟から始まった取り組みが今ではほかの病棟に広がり、看護師だけでなく多職種にも拡大しつつあります。これからも、患者さんたちが安心して療養できるよう、私達でできる“新たなケア様式”について考えていきたいと思っています。
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