日本老年精神医学会における新型コロナウィルス感染症流行の影響調査の紹介

浜松医科大学臨床看護学講座 鈴木みずえ

日本老年精神医学会は6~7月に会員に実施したアンケート調査についてご紹介します。回答者が所属する医療機関などでの新型コロナ患者・陽性者の入院や外来対応などは、10~20%の範囲で実施されていたようです。

社会的距離を保つ対策の影響について、認知症がある高齢者の「社会的孤立が強まった」(64%)、「精神的健康状態またはBPSD(行動・心理症状)が悪化した」(48%)、「認知機能が低下した」(41%)、「ADL(日常生活動作)が低下した」(57%)という回答だった。認知症以外の精神障害がある高齢者では、「社会的孤立が強まった」(62%)、「精神健康状態が悪化した」(56%)でした。さらに新型コロナ感染症の流行に関連して、発症または増加がみられた精神障害には、不安障害(54%)、うつ病(43%)、認知症(43%)、睡眠障害(33%),アルコール関連障害(17%)、せん妄(12%)などが報告されています。

部屋にいることやマスクをすることなどの感染症対策が守れない患者に対して、隔離や身体拘束を行わざるを得なかったと報告されています。「自宅待機でよい陽性者が、認知症であるため精神科病院へ入院しなければならず、隔離や身体拘束をせざる得ない状況が発生している」との声も寄せられています。

この報告からもコロナ禍における認知症高齢者のケアの状況が大変厳しいことが理解できます。しかしながら、コロナ禍においても身体拘束をせずにケアをしている施設も認められます。これらのコロナ禍での状況の違いは、認知症に対する専門知識のあるスタッフの有無や活躍に大きく影響を受けているように思います。

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