認知症高齢者の新型コロナウイルスの前駆症状として起こりやすいせん妄
イタリアの高齢者施設における新型コロナウイルスに罹患した認知症高齢者57人の後向き研究によると、せん妄が認知症高齢者の新型コロナウイルスの約38.7%の初発症状として起こることを発見しました。また、せん妄の種類では、低活動性せん妄(52.4%)の方が過活動せん妄(47.6%)よりわずかに多く認められました。さらにせん妄の罹患率は、年齢と共に増加ししていました。中程度および重度の認知症高齢者は、進行した認知症のステージより高いせん妄の罹患率を発症していました。
研究結果から、せん妄症状のあるCOVID-19をもつ認知症高齢者で(死亡率:52.4%対8.3%、OR=17.0、95%CI:2.8-102.7)でせん妄を発症しなかった認知症高齢者よりも高い死亡率も認めされています1)。さらに男性であること、多発性共存症は、COVID-19死亡率のリスクを増加していました。コロナウイルス感染症による中枢神経系(中枢神経系)、低酸素、急性疼痛、認識注意障害など炎症性のプロセスは、せん妄を引き起こす可能性があることが報告されました。
慶大の研究チームが新型コロナウイルスが引き起こす中枢神経系障害のメカニズムの一部を解明している2)ことからも、認知症高齢者が新型コロナウイルスの発症時にせん妄を起こしやすいことは納得できます。以上の論文から、クラスターが発生している高齢者施設に入所中、あるいは陽性者と濃厚接触した認知症高齢者などハイリスクの認知症高齢者のせん妄は、新型コロナウイルス感染の前駆症状である可能性があります。このような時にはPCR検査とせん妄のスクリーニング検査を同時に行い、陽性時の治療とともにせん妄に対する対策も重要になってくるでしょう。
1)T.E. Poloni, A.F. Carlos, M. Cairani, et al.,
Prevalence and prognostic value of delirium as the initial presentation of COVID-19 in the elderly with dementia: an Italian retrospective study, EClinicalMedicine, 26 (2020), Article 100490
https://www.journals.elsevier.com/eclinicalmedicine
2)新型コロナが引き起こす中枢神経系障害、慶大がメカニズムの一端を解明
新型コロナが引き起こす中枢神経系障害、慶大がメカニズムの一端を解明慶應義塾大学(慶大)は9月18日、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)により引き起こされる中枢神経系障害の病原性制御因子として「CCN1(Cyr61)」分子が関与している可能性を見出したと発表した。
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